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 三島由紀夫の美学講座

三島由紀夫の美学講座 (ちくま文庫)

三島由紀夫の美学講座 (ちくま文庫)

三島由紀夫ほど“美学”という言葉と結びつけられてきた作家はいない」にもかかわらず、その美術論はこれまでまとめられたことがなかった。本書は、美と芸術に関して三島由紀夫が書き遺した文章を美学者である編者が編纂したものである。編者は三島の晩年までの20年間の文章によって作家の美学を構成し、三島由紀夫を理解する上で重要な視点を提供している。


全体は7つの部分から成る。文学を常に念頭に置きつつ芸術について考察し、また自らの芸術家としての自負と決意を宣言する「美と芸術」および「時代と芸術家」。ギリシャの廃墟を前に創造と破滅の相関を論じ、東西の庭園比較を展開する「廃墟と庭園」。具体的な作品に関する言及をまとめた「美術館を歩く」「三島由紀夫の幻想美術館」では作家の嗜好が明らかになる。「肉体と美」「肉体と死」で官能的な肉体美学へと行き着く三島美学は、谷崎潤一郎「金色の死」における芸術論の分析で締めくくられる。(林ゆき)