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マルセル・デュシャン語録メモ

 瀧口修造氏によって1964年頃から準備されていた「マルセル・デュシャン語録」の発行は1968年11月、東京ローズ・セラヴィである。部数は全560部で、その内の60部(50 + HC.X部)にオリジナル作品5点が一緒に納められている。残り500部にはオリジナル作品の複製が収録されている。


 発行としているローズ・セラヴィとは、瀧口が架空の店の名として命名を依頼したデュシャン自身の決定によるものであり、デュシャンが若い頃に用いた偽名から取ったものである。またこの取扱所(販売)は南画廊であった。尚、発行日は7月28日となっているが、これはデュシャンの誕生日を記念したものであるという。


 しかし実際に完成したのは11月の事であり、またデュシャン自身が亡くなったのは同年10月である。瀧口とデュシャンが直接面識を持ったのは1958年。それから10年かかって完成した「マルセル・デュシャン語録」。『言葉の塊がオブジェのようにちりばめられた』この本を、デュシャン本人は見ることはなかったという。