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 夏への扉 -- マイクロポップの時代

夏への扉 -- マイクロポップの時代|The Door into Summer: The Age of Micropop」


 2007年2月3日(土)〜 5月6日(日)  水戸芸術館現代美術ギャラリー

松井みどりは、美術評論家として1995年から2006年に至る約10年間のアートシーンの中に「マイクロポップ」的表現の出現と実践の現場を読み取ってきました。作家が産み出す新しい表現と美術評論家としての対峙は、それまでにはなかったタイプの作品群が位置する場所を、言説として思索する過程であり、松井は専門とする文学的分析手法から「マイクロポップ」という概念を獲得するに至ります。

本展覧会は、松井みどりが「マイクロポップ」なる概念を獲得する過程において、重要な働きかけをした作家の作品と、「マイクロポップ」の視座から未来を見渡した時に、さらなる展開を担うと思われる若手作家の作品とによって構成されるグループ展です。

本展覧会は「マイクロポップ」というコンセプトのもとに15人の日本人作家 -- タブロー・ドローイングを出品する奈良美智杉戸洋落合多武、有馬かおる、青木陵子タカノ綾、森千裕、國方真秀未、写真作品出品する島袋道浩、野口里佳インスタレーション作品を出品する半田真規、K.K.、ビデオ作品を出品する田中功起大木裕之、泉太郎 -- を集め、彼らの新旧作品 250余点を通して、独自な創造として発生しながらもひとつの共通性を持つようになったある芸術的創造力の姿を提示し、その芸術表現と同時代の、若い人々の生き方や感性との共通点や、後の世代への影響力について考えようと試るものです。


松井みどり(美術評論家)
上智大学東京大学大学院で英米文学、プリンストン大学大学院博士課程で比較文学を専攻し、東北大学助教授として英米文学の分野にて現代詩を研究していたが、同大学を辞した1994-95年頃から美術評論家として、海外の学術誌、論文集、企画展カタログに同時代の日本の現代美術の潮流や作家について論文を寄稿しはじめ、日本を代表する美術評論家として日本のアートシーンを精力的に海外に紹介している。


*「マイクロポップ
仏哲学者ジル・ドゥルーズが著書『カフカ:マイナー文学のために』において明らかにした、新しい時代の芸術のモデル。メジャーな言語を使って表現することを余儀なくされながら、そのなかで独自の脱線や言い換え、表現コードの組み替えを行い、既存の表現の限界を超えて新しい表現を作っている想像力のありかたを指している。


*「夏への扉
アメリカのSF作家、ロバート・A・ハインラインの小説のタイトルから取られている。この作品に流れる楽観的な世界観は、「現実」が限定されたひとつの世界であるとは限らず、むしろそれは、一瞬一瞬の選択によって変わる無限の可能性と崩壊の危機をはらむ、流動的なものであるという意識に裏打ちされている。


 http://www.arttowermito.or.jp/natsutobira/natsutobiraj.html